ブッダ・スクールの便所棟、シャワールーム棟が竣工しました

2022.11.01

生徒数の増加に加え、寄宿舎で暮らす生徒たちの衛生面にも配慮して建設した施設です。
教室棟と同様、石積みの壁に木で梁を架け、天然スレートで屋根を葺くというスタイルを踏襲しながら、石積みの壁の内部に鉄筋コンクリートで耐震補強を施しています。
建物の構成は、南北に細長い敷地形状に合わせて便所棟とシャワールーム棟を独立した建物として縦列に配置し、連続した下屋(げや/建物から張り出してつくられた片流れの屋根)でつないでいます。
この下屋は設計段階では計画していなかったのですが、教室や寄宿舎から少し離れた場所にあるため、雨天時にも濡れずに順番待ちができるようにと、工事段階で追加されたものです。コロナ禍で現地に行くことができない状況が続いていたため、直接学校側との打合せや施工の確認はできませんでしたが、フィリムでもスマートフォンが使えるようになったことにより、このような期中の設計変更の対応も日本からタイムリーにできるようになりました。

また内部はこれまでの建物では石積みの壁を現した仕上が主流でしたが、今回は衛生面とメンテナンスにも配慮して腰と床をタイル貼りとしています。フィリムではタイルを入手することができないので、カトマンズやゴルカといった都会で調達して運搬しないといけないのですが、2015年の大地震以降、車道の整備が進み、建設資材の運搬も以前に比べてやりやすくなってきています。ブッダ・スクールが開校した当時は車の通れる道まで徒歩で3~4日かかっていたのが、雨季を除けば今ではフィリムから徒歩1日の村まで車が入れるようになっています。

ただ建設資材の運搬がしやすくなったことで、施工の効率化や合理化が図れるようになった一方で、マナスル街道周辺の村に安価で施工が容易な建材(波型のカラー鋼板や樹脂製の板、コンクリートブロックなど)が流通しはじめ、自然の素材だけで構成されていたこの地域の景観が、年々失われていっているという現状もあります。フィリム村の発展に伴い、ブッダ・スクール周辺でも赤や青のトタン屋根、コンクリートブロックの壁にカラフルな塗装を施した建物などが散見されるようになってきました。ネパール政府もヒマラヤの環境を保護しようという方針を出しながらも、経済性や利便性を優先せざるを得ないという局面もあり、今後の大きな課題であるように感じます。